大学無償化とは?対象や支給額から有用性を考察すると
今年度に高校卒業を予定する生徒から、高卒2年以内の学生(浪人生など)で住民税非課税世帯を対象にして、授業料を支給・減額することが決まり賛否両論の嵐となった事は記憶に新しいでしょう。
実際「大学無償化」について詳しく紐解いてみると、どうにも砂上の楼閣でしかないお粗末な政策だとしか思えない要素ばかりです。
今回は、大学無償化法について対象世帯や支給金額から有用性などを考察していきたいと思います。
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大学無償化法の概略
2018年6月15日に閣議決定となり、2020年4月からの実施が間近に迫った高等教育無償化。
この”無償化”という甘言を純粋に信じている方はいないだろうとは思いますが、いまいち理解できてていない、と言う人は多いかと思います。
ここでは大学無償化の概略、対象や支給金額について紹介します。
対象となるのはどんな生徒?
大学進学のためには「世帯分離」をする必要があります。簡単に言うと生活保護の対象外となる、ということです。
4人世帯であったなら支給金額は3人分になるということですし、生活保護から抜けた子供は生活費や学費のすべてを自身で工面しなくてはいけません。
さらに生活保護から抜けた子供が大学などに進学する場合は奨学金を借りることが必須です。
2018年度からの改革で、住宅扶助のみ据え置きとなり、進学時に転居する場合は30万円、転居しない場合は10万円の「進学準備給付金」の支給が決まりました。
しかし転居の場合30万円で新生活が始められるかと言われると甚だ疑問でしょう。
支給金額は大体どのくらい?
授業料減免の上限は国公立大学が54万円、私立大学が70万円となっています。
給付型奨学金だと国公立で自宅通学なら上限35万円、自宅外通学なら80万円となり、私立の自宅通学は46万円、自宅外通学なら91万円が上限となります。
この支給金額であれば確かに国公立大学の場合はほぼ無償だと言えますが、私立大学の場合だと30万円ほどは自己負担の必要があります。
支給が打ち切られることもある
高校段階の成績・学習意欲はもとより、大学進学後に1年間の必要取得単位数の6割以下しか取っていない場合やGPA(平均成績)が下位4分の1の位置にある場合は大学側からの警告があります。
警告を受け改善が見られれば良いですが、2年間連続して警告されると支給の打ち切り、退学や停学処分も同様に支給打ち切りとなります。
支給されるお金は10月からの消費税増税から回されるようで、誰かの財布から絞り取られた税金なのですから成績がふるわない生徒に分け与える必要はない、というのが一般的な見解でしょう。
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中間所得層を見捨てると詰られる制度
大学無償化について考える上で忘れてはいけないのが、そもそもの支給対象でしょう。
支援の対象となるのは、住民税非課税世帯(年収270万円未満)から「年収が380万円未満」の世帯のみです。
なお、平成30年の調査では日本の所得平均は約551万円、所得が平均以下の世帯は62.4%となっていて、年収300万円以下の世帯は33.6%です。
学費はどうにか工面できるけれど生活費分は奨学金を借りる必要がある、中間層と呼ばれる年収300万円以上600万円未満の所得の家庭では、従来の制度では授業料の減免を受けられる制度もあり何とかやりくり出来ていました。
しかしそういった中間層を支えていた制度がどうなるのか不透明であるため、増税と学費の両面から直に影響を受けることは容易に予想されます。
現実的ではない「大学無償化」計画
この政策には致命的な欠陥がいくつかあります。
まずは支給打ち切りの判断基準の不透明さ。
この基準では大学側が学生へと訓告を行うことを前提としていますが、そもそも大学が学生一人一人に対して確実に訓告をすると言えるのでしょうか?成績で少しでも忖度してしまうことがないと一概に言えるのでしょうか?
第二に受給者の範囲のあまりの狭さと不合理さ。
基本的に生活保護受給者は大学へと進学することが出来ず、生活保護から抜ける必要があると先に触れましたが、世帯分離を行うと親の保護から外れるということなので、学費や生活費の工面だけでなく国民健康保険に自ら加入する必要もあります。
”致命的過ぎる”欠陥を考察する
大学進学にはそのような金銭的苦難ばかりですので、生活保護受給世帯の子供の大学進学率は35%すら下回るとされています。
これは当然の事でしょう。わざわざ奨学金という高い借金を背負って大学へ行くよりも、いち早く現場に出たほうがいいと考える人が多いのですから。
地方高校の”賢い”進学事情
高校が地域に根ざしたような学校であれば、わざわざ大学へ進学して平々凡々な企業に勤めながら十数年も奨学金の返済を続けるよりも、高校卒業と同時に地元の企業に就職し実家から通勤した方が何百倍も「地元に貢献しながら楽に生きていける」方法と言えるでしょう。
より素晴らしいのは、離島だとか、そういう地域の高校にありがちな医療従事者を養成するための地方自治体からの奨学金でしょう。
放射線技師だとか、看護師だとかの大学進学に奨学金を支給し卒業後に数年の勤務という義務を課す。
そういう地域医療に対する奨学金を利用して大学進学するのはとても賢いと言えるのではないでしょうか。
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大学無償化よりも奨学金の無利子化を
大学無償化を受け、東工大や一橋大のようないくつかの国立大学は授業料の値上げを発表しました。
法人化の影響か否かは判断が難しい所ですが、仮に54万円授業料として支給されても授業料の値上げによって約64万3千円必要になってしまえば、私立大学の授業料同様に「無償化」ではないのです。
この授業料値上げの流れは他の国立大学にも伝播することが見込まれるので、結局無償化などどうしたって成し得ないのです。
砂上の楼閣に過ぎない大学無償化などではなくより後世のことを思うのであれば、何よりも優先して成すべきは奨学金に付きまとう利子の撤廃等ではないでしょうか?
大学無償化とは?対象や支給額から有用性の考察
あえて大学を無償化する必要性は到底感じられないのが現状です。
教育の普及云々のために無償化を進めたいのであれば、思い切って国立大学の無償化に踏み切ってしまえばいいのです。中途半端に支給するからややこしい話となり大学群に先手を打たれるのです。
もともとあまり学費が高くないからと国立大学に志願する学生がいるのだから、定員割れの解決も貧困故に大学進学を諦める優秀な学生を集めることもできるのではないでしょうか。
勿論無償化以上にすべきなのは奨学金に付随する学生の借金問題でしょう。
学ぶには金がかかるのが世の道理ですが、2.7人に1人が奨学金を借りて進学している今日、つまり2人に1人が卒業と同時に数百万の借金を背負って社会に出なくてはいけないのです。
大卒の初任給は平均20万ですが、手取りはもっと低いでしょう。そこに奨学金の返済が加わるなら、生活が厳しくなってしまうことは簡単に予想できることです。
現役大学生の本音としては
勿論大学の無償化が成立したら年間に100万円ほど支払っている現役大学生の身の上ですので、これ以上ないほどの喜ばしいことはありません。
しかしこの制度であれば私は対象外であり、むしろ負担の増える中間所得側ですから反対したいのが本音です。
単純計算ですが卒業時にのしかかる借金は300万円をゆうに越え、大学進学すべきだったのかと疑問に思う友人も少なくないです。
無償化でぬか喜びしたのも刹那、中身を知った瞬間に似たような境遇の友人らと絶望したのは記憶に新しいです。
「こんな時代に生まれたことと、教育が一般的でない時代に生まれるのどちらがつらいの」という友人の言葉が耳に残って離れません。